【表面】

　
　　　　　　　　　　【裏面】

戸來 貴規　Takanori HERAI

1980年生まれ　岩手県在住
　　
B5判の紙に意味不明な幾何学模様が描かれ、1000枚近い枚数の紙束の中央部が事務用の黒い綴り紐で無造作にとじられている。施設職員によると「実はこれは文字です。彼の日記なのです。」と言う。その〝日記〟は、裏表に書かれ、日付と気温の部分の数字が毎日違っているだけで、他は全てまったく同じことが書いてある。その文字は彼独自の法則とリズミカルな構成で貫かれ、毎日１枚ずつが紙束に加えられていくのだ。施設の職員によって発見されるまで、その孤独な表現は過去10年以上に渡り破棄されていた。　
　彼は知的障害者施設で暮らしている。作品はアール・ブリュット・コレクション（スイス）での「JAPON」展(2008-2009年)に出展され、同館にも収蔵された。また、パリ市立アル•サン•ピエール美術館での「ART BRUT JAPONAIS」展（2010年〜2011年）にも出展された。