展覧会の様子

ウェルカム・コレクション (Wellcome Collection イギリス ロンドン)

「Souzou:Outsider Art from Japan」

開催期間:2013年3月28日(木)~2013年6月30日(日) ※終了しました

入場者数:約94,000名

サイト:Souzou: Outsider Art from Japan - Wellcome Collection

  • ウェルカム・コレクション外観(1)
  • ウェルカム・コレクション外観(2)
  • 地下鉄構内のポスター(1)
  • 地下鉄構内のポスター(2)
  • オープニングセレモニー
     
  • オープニングセレモニーにて挨拶をする北岡賢剛氏
    (社会福祉法人滋賀県社会福祉事業団 理事長)
  • 展示の様子(1)
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「Souzou:Outsider Art from Japan」展 担当キューレーター
シャミタ・シャーマチャージャさんに聞く!

――ウェルカム・コレクションではどのような展覧会を考えてますか?

ウェルカム・コレクションはまだ比較的新しい美術館で、医学・医療、生命と芸術の「つながり」を追求する展示を行っています。つまり「人間の在り方」の全てがテーマとなります。
では、この様な壮大なテーマに基づいて今回の展覧会はどの様なものにするのかと考えた時に、人間の「健康」とは身体的な健康だけとは限らず、精神的な「健康」をも含みます。このような視点からの見方も含めて今展を組立て、イギリスで公開したいと考えています。

今回のウェルカム・コレクションでのArt Brut from Japan展では未だかつてない世界を見る人に覗いていただけるような展示を考えたいと思っています。「モノを創る」ということが言語の枠組みを超えたコミュニケーションを成立させることが出来るということを伝えたいと思っています。「作品に物を言わせる。」というような作品の力が全面にでる作品中心の展示方法を考えます。
この展覧会を通して「障害」ではなくて「可能性」に重点をあて、作家たちの身体的・精神的な状態、障害があるということにはさほど重点をおかず、作品自身の表現力を引き出したいと思っています。作品と観客が「対話」できるということに重点をおきます。言語の枠組みを超えたコミュニケーションの在り方を探索したいと考えています。

アール・ブリュットの特徴として、作家は観客など特定の誰かに作品を見せることを意識して制作を行っていません。
作品を創るという行為そのものに熱中している人が多いと言われています。このことは作品が外に向けて放つメッセージ性に欠けているという訳では決してありません。アール・ブリュットが発するものには大いにメッセージ性があり、それは言語の枠組みを超えるものでもあります。アール・ブリュットという大変興味深い分野は作品を体験することにより探求できるのです。

――日本のアール・ブリュット作品はどのような印象ですか?

「幼少時代」対「大人になること」、創造の楽しさ、使用する素材の「素材感」を楽しむ、日本の文化に潜在する影響(アニメ、漫画)などの影響を感じます。作家さんたちは全員与えられた素材をとってもクリエイティブに使用していると思います。触知性に満ちた喜びや、建造する喜びを強く見受ける事が出来る作品ばかりです。限られた素材で、これだけの多様なスタイルの物が創出されるとは、人間の想像力の無限の可能性を感じます。

また日本に来てから私は作家の創造プロセスにとても興味を持ちました。それと材料の使い方が大変経済的で無駄が無い事にも関心を持ちました。そして、技工に重点を置く「職人的アプローチ」もあるのではと感じました。(特に陶芸や布地を使用する作品)これは日本の伝統文化からくるものなのでしょうか。その答えは分かりませんが、いずれにせよ作家にとって物造りとは触覚の喜びや癒しをえる効果を持つ事は間違いありません。

そして作家を問わず良く見かける作品のテーマとしては、幼少時代での時間の停止や延長があることに気づきます。結婚やセックスのような「人間の性」を題材にし、大人になることへの渇望を描くような作品が多いです。その他には「交通」をテーマにした作品も多いです。これは「解放」や「脱出」を意味するのでしょうか。それと「ユートピア」のような別世界の表現した作品も多く見かけます。人間や動物のフォルムを使用して自我を象徴するモチーフにしているパターンも伺えます。またこれは世界中どこへいっても共通してみられることなのですが、その国で生まれ育ったからこそ表出する文化的な影響を日本の作品からも感じます。
作家が生まれ育った、または住んでいる国の「文化」というものは何等かの形でその作品に影響し現れます。人間は自分の周りを取り囲む文化を空気のように吸収して、身体の一部となり、そしてそれらの情報は新たな形でアウトプットされ、作品に表現されていきます。
それは何を意味するのかと言うと認知することができれば自分が育った国の文化をイメージ化して作品の中で特徴として現れでてくるということです。そこからは国を越え、人間に共通する表現の仕方に出会うことができます。

シャミタ・シャーマチャージャ (Shamita Sharmacharja)

ロンドンのウェルカム・コレクションの学芸員であり、「Souzou: Outsider Art from Japan」 展のキューレーターを務める。ウェルカム・コレクションにて仕事をする前はイギリス芸術協議会主催のInspire Curatorial Fellowship(学芸員研究奨励制度)に参加。
前職は東ロンドンの有名現代美術館ホワイトチャペルギャラリーでの展覧会企画チームの一員。ホワイトチャペルギャラリーにて多くの展示に携わった中、2006年には20世紀のヨーロッパのモダニズムにアール・ブリュットとその作家たちが与えた影響を探る「Inner Worlds Outside」展に関わる。
ロンドン、テート・モダン博物館にてアシスタントキューレーターを務めた経験も持つ。
テート・モダン博物館では教育部門の一員として幅広く芸術家や学校、学習障害や行動障害を持つ人々を支援する市民団体と仕事を行ってきた。彼女は2003年にスコットランド、エジンバラ大学を英文学と美術史の首席優等学位で卒業。

ウェルカム・コレクション (Wellcome Collection イギリス ロンドン)

医学研究支援を行う公益信託団体「ウェルカム・トラスト(1936年設立)」が、医療と化学とアートの融合を目的として2007年に開設した美術館。
展示スペースは、世界中から集めた医学関連のアンティークコレクションを展示する常設展示スペースと、近代美術から最近の医学にまつわる展示などを行う企画展示スペースが設けられている。両展示スペース共に展示内容や展示の見せ方にも定評があり、ロンドンで近年注目を集めている。
また、館内には展示スペースの他に、カフェや書店、ワークショップスペースなどが併設され、身近にアートを感じることができる場所としても多くの人々から親しまれている空間となっている。
http://www.wellcomecollection.org/